『健康エコナ』は本当に"健康"だろうか?Part3
Diacylglycerol, Pros and Cons
当サイトの拙稿(Part2)に対し、花王株式会社ヘルスケア第1研究所 森健太氏より、いろいろなご指摘を頂きました。
下線部分が森氏のご意見、太字部分が専門的な解説です。
真摯なご対応ありがとうございました。
正確で詳細な情報を発信できることは当ウェブオーナーとして無上の喜びです。
2003.3月20日 河合勝幸
安全性に問題はないか?
Part1で考えたことは『同カロリー』の油脂でも代謝経路が異なると別の効果がありそうだということです。花王も日清オイリオも商品の説明責任を十分に果してないから消費者がいろいろと考えあぐむのです。
それでは安全性はどうでしょうか?油脂は短期の安全性だけでなく、中・長期の安全性も大切です。
かってのリノール酸のフィーバーを思い出してください。20年前には製油メーカーは高リノール酸オイルを競い合っていました。人類がこれ程多量のリノール酸を摂取した経験はなかったのです。案の定、高リノール酸オイルを5年以上摂取すると明らかに発ガン率が上昇することが分かりました。リノール酸は絶対に必要な必須脂肪酸ですが酸化しやすいので取り過ぎは禁物です。都合が悪くなると製油メーカーは"一言の詫びもなく"オレイン酸に看板を塗り替えてそ知らぬ顔です。そしてまた、自然界に少量しか存在しないジグリセリド(ジアシルグリセロール)や中鎖脂肪酸を食卓に持ち込んで、私達を未知の領域に誘い込もう� �しています。
『健康エコナ』の主成分ジグリセリドは『食品添加物』です。
ジグリセリド(ジアシルグリセロール)は乳化剤、可塑剤、増粘安定剤などに使われる食品添加物です。花王から"健康"のつかない『エコナ』ブランドの揚げ油や炒めもの用の油が発売されています。それらの原材料に『乳化剤』と表記されているのが"たぶん"このジグリセリドです。『健康エコナ』の80%を占める主成分です。
どのように間隔ワイパーは働いていますか?
食品衛生法では、食品添加物とは、食品の製造過程で、または食品の加工や保存の目的で食品に添加、混和などの方法によって使用するものと定義されています。
わが国では、食品添加物は厚生労働大臣が安全性と有効性を確認して指定した「指定添加物」、天然添加物として使用実績が認められ品目が確定している「既存添加物」、「天然香料」や「一般飲食物添加物」に分類されます。また、天然香料、一般飲食物添加物をのぞき、今後新たに開発される添加物は、天然や、合成の区別なく指定添加物となります。
以下のように分類することもできます。
1.自然界にはないもので、化学的に作り出したもの・・・サッカリンナトリウムなど
2.自然界にあるもので、化学的に作り出したもの・・・ビタミンCなど
3.自然界にあるものを、そのまま、または取り出したもの・・・ペクチンなど
4.本来食品であるものが、添加物的に使われることもあるもの・・・エタノール(柿の渋抜き)など
花王では1990年代の前半にエコナ炒め油とエコナ揚げ油という2種類の食用油を発売しています。両者とも主成分はトリアシルグリセロール(トリグリセリド)ですが、調理機能を高めるためにエコナ炒め油にはレシチンを加えて焦げ付きを抑える機能を、エコナ揚げ油には脂肪酸エステルを加えて天ぷら時の衣の花咲き性を良くする機能を与えています。それぞれの添加物を油に良く溶け込ませる目的でジアシルグリセロールを溶解剤として数%用いています。これらの使い方はジアシルグリセロールを食品添加物として用いた例です。しかし、『健康エコナ』の場合、ジアシルグリセロールは80%を占める成分ですが� �食品添加物のように何かを溶かすためや乳化特性をよくするために使われているものではありません。安全上あるいは食経験上問題ないと認められた上で厚生労働省が特定保健用食品として表示許可した食品です。
モノグリセリド、ジグリセリドはEU(E471)やアメリカでもGRAS(一般的に安全と認められているもの)とされる食品添加物ですから、まずは健康を損う恐れはないのでしょう。しかし、これは"食品添加物として日常的な、常識的な使用量を守っていれば"ということです。
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花王のジグリは、食品ですから、EUやGRASに食品添加物として登録されて食品添加物と同じ分類とされる表現になっています。とくに「これは食品添加物として日常的な、常識的な使用量を守っていればということです。」という部分は、花王のジグリが食品としてGRASに登録していることを否定することになります。(森氏)
モノグリセリド、ジグリセリドは中性脂肪(トリグリセリド)生合成の中間体として、あるいは地面に落ちたオリーブの実を搾ったオリーブオイル(遊離酸が多くてそのままでは食用にならない)などに含まれていますから、たしかに自然界にあるものです。
自然の植物油にもある。だからGRAS(一般的に安全)だということと、GRASだから安全性が証明されているということは同じではありません。
GRASには、各メーカーで調査や試験した安全性に関するデータを専門家に評価してもらうことにより登録できる制度です。GRAS登録のあり、と無しとでは大きな違いです。もちろん、GRAS登録だけで安全性を完全に証明したことにはなりません。(森氏)
また、『健康エコナ』のジグリセリドは自然の植物油に少量あるジグリセリドを集めたものでもありません。食用オイルを加熱、加水分解して再合成した加工油であることも知っておきましょう。このことは悪玉として近頃注目されている『トランス型不飽和脂肪酸』が『健康エコナ』には"たくさんある"(3.5%~5%)ことからも分かります。
通常の油にも2-4%入っており、エコナにたくさんという表現は、ちょっと苦しいですが。(森氏)
食品や医薬品の許認可を握るFDA(アメリカ食品医薬品局)によると、アメリカ人は既にこのモノグリ・ジグリを食品添加物として一日1g~10gは摂取しているだろう、そして『健康エコナ』を家庭用の食用オイルとして発売すると一人あたり一日8g~18gのモノグリセリド・ジグリセリドを摂ることになるということです。
花王から申請があった、より大きな需要が見込まれる『マーガリン』には自然の植物油ではないという理由で認めませんでした。
単純に考えた場合、より大きな需要が見込まれる、ということはありません。企業努力に基づくことです。
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米国においてマーガリンというのは規格が厳格に決められていて使用できる油の種類が決まっています。植物油、エステル交換油、水素添加油は認められていますが、ジアシルグリセロールは規格に入っていません。マヨネーズと同じ規格て作ってもジアシルグリセロールを使用するとマヨネーズと呼べなくなるのと同じです。これが、マーガリンが認められなかった理由です。ただし、私たちがスーパーで購入しているマーガリンと呼んでいるものは多くがファットスプレッドであり、それについてはジアシルグリセロールはGRASです。
『健康エコナ』を無制限に食べて大丈夫?
食品添加物でもあるジグリセリド(ジアシルグリセロール)を厚生労働省が『特定保健用食品』として薦めているのはなんとも腑(ふ)に落ちないことです。
『特定保健用食品』のマークをつけて、人間ドック学会のご推薦も受けて、食用油からサラダドレッシング、マヨネーズ、マーガリン類(雪印ネオソフトに健康エコナ50%がある)とジグリセリドの"大フィーバー"です。もともとが『乳化剤』ですから、そのうちに『健康エコナ』入りのアイスクリームまで登場するかも知れません。業務用のショートニングにすればパン類から菓子ケーキまで、それこそとどまる所を知りません。
大フィーバーとは言い過ぎではないでしょうか。(森氏)
花王はジグリセリド(ジアシルグリセロール)の安全性は、体重1kgあたり0.5g/日までは確認した(90% C.I.)としていますが、いずにしてもそういう代物(しろもの)なのです。最近でも『ベータカロテン』の教訓があります。食道ガンに効果があると報告されたベータカロテン(サプリメント)を肺ガン予防に投与したら、逆に肺ガンが増えてしまってあわててトライアルを中止した実例があります。
ジグリセリドの化学性発ガンはないとされています。しかし、消化管ホルモンへの影響は明らかではないと思います。
特に糖尿病は消化管ホルモンの影響をとても大きく受ける病気です。食物繊維が分解して出来る有機酸ですら『腸グルカゴン』の分泌を高め、それが腸の上皮細胞の増殖を促進して『大腸ガン』への関与が疑われる位ですから用心にこしたことはありません。
PubMed を使用して、「腸グルカゴン」、「グルカゴン」、「大腸ガン」、「ガン」などのキーワードにより検索しましたが、食物繊維が分解してできる有機酸(短鎖脂肪酸)には、腸グルカゴンを介した発ガンの報告はありません。むしろ、大腸ガンを予防する、という見解が主流となっております。河合さんのご指摘にあります"「腸グルカゴン」の分泌を高め、それが腸の上皮細胞の増殖を促進して「大腸ガン」への関与が疑われる、という内容の論文をお教えいただければと思います。もし、無いようでしたら、この表現は、ジグリセリドの化学的発ガン性を誘導する内容となり、不適切な内容となります(森氏)
また、『健康エコナ』のジグリセリドは血中の遊離脂肪酸を増やすという研究があります。遊離脂肪酸はベータ細胞� �インスリン分泌を刺激しますから必要もないのにそんなものが過剰にあればベータ細胞には毒性になります。また、遊離脂肪酸は肝臓の糖新生(ブドウ糖の放出)を高めますから血糖上昇の元凶でもあります。
ジアシルグリセロールを糖尿病患者に対して3ヶ月間摂取させた研究では、血糖値や血清TGの低下が認められており、血糖上昇を引き起こすことは確認されていません。(森氏)
『健康エコナ』は本当に"健康"だろうか?
どう考えても食用加工油が"健康"を名乗るのはおこがましい気がしてなりません。
私はエキストラ・バージン・オリーブオイルに勝るオイルはないと思います。なにしろオリーブの栽培は5000年以上も前から行われており、今までただの一度もオリーブオイルの副作用の報告があった例がないのです。これ以上の安全性の保証はありません。
たしかに『健康エコナ』は太目の人がそれ以上太るのを防いでくれるようです。しかし、その程度で『健康』なのでしょうか。
エキストラ・バージン・オリーブオイルには必須脂肪酸はもとより、抗酸化ビタミン、いま話題の植物化学物質(フラボノイドetc)の数々、コレステロールの吸収を抑えるベータシトステロール、日光から肌を守るスクワレン等々ありとあらゆる素晴らしい物質が含まれています。なによりもおいしいオイルなので少量でも料理の味を引き立ててくれます。
カロリーコントロールに気を遣う糖尿病者にこれ以上の贈り物はありません。
- なお、私は森氏とは面識が既にあることを述べておくと共に、花王(株)の株式を所有していないこと、運営助成金等も一切受けていないことを明らかにいたします。
Part1
Part2
[この記事はあくまでも個人的な見解です]
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